九州大学薬学研究院薬理学分野


エコファーマの提唱


私たちの研究からP2X4やP2Y12受容体ブロッカーはすぐれた神経因性疼痛治療薬となる可能性が出てきた。しかし、新規医薬品を開発するには巨額な開 発費をかけても10数年の歳月が必要とされ、今現在痛みに苦しんでいる患者さんには福音とならない。新薬の開発に努力する一方で、開発までの間に患者救済 の何らかの工夫が必要となる。その一つとして、国が既に承認した医薬品の中から、薬理学的基礎データを基にして新しい創薬シーズを探索しようと試みた。既 承認医薬品には膨大な基礎資料があり、ヒトへの安全性の確保もはかれ、従って開発時間の短縮が図れると考えられる。このような、薬理学的エビデンスに根ざ した新薬候補を人類の資産である承認済み医薬品から見出す試みを「エコファーマ」として提唱する。
患者に対しては短期間で薬を提供できるし、製薬企業から すれば既存薬の新規適用拡大(リポジショニング)につながり、薬の寿命を長くするという効果をもたらす。また、適応外処方をしなければならない医師の精神 的・法的な負担を取り除くという意味もある。患者に優しく、エコロジカルかつエコノミカル(エコロジーとエコノミーとは共に古代ギリシアの市民の家政機 関・オイコスを語源とする)なエコファーマの実現により、資源の浪費を回避し、人件費の削減、開発期間の短縮などの効果により国家の総医薬品費の削減にも 貢献できると考えられる。この考えに基づき、我々は三環系抗うつ薬や四環系抗うつ薬、SSRIの一部に著明なP2X4アンタゴニスト作用(in vitro)や鎮痛作用(in vivo)を持つことを明らかにした。)

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